教育援助の抱えている2つの課題

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こんにちは。
Nです。

先々週の記事でも書きましたが、世界の教育はここ10-20年で大きく改善されつつあります。
初等教育の未就学児童率は、2000年に15%でしたが、2007年には10%になり、2014年には9%まで改善されています。(UIS, 2016,  p.2)

しかし、2つの大きな課題に直面しています。

今回は、そんな現在、教育援助の抱えている2つの課題について書こうと思います。

基礎教育へのアクセスの不完全性

1つ目の課題は、「アクセスの不完全性」です。上述したように、近年、初等教育の就学率は大きく改善されてきています。しかし、未だに小学校に通うことのできない子どもたちが残されています。

特定のグループが不平等に教育のアクセスから除外されていることがあります。

難民はその脆弱なグループの1つです。

世界の子どもの91%が小学校に在籍していますが、難民の就学率はわずか63%です。中等教育レベルでは、世界平均が84%であるにもかかわらず、難民の就学率はわずか24%です。(UNHCR, 2019, p.6)

加えて、障がいを抱えた子どもたちも教育にアクセスできないことが多々あります。

14歳以下の世界の子どもの5.1%が障がいを抱えていると言われています。(UNESCO, 2014, p.56)しかし、被就学児童における障がい者の割合は、およそ3分と言われています。(Sæbønes et al., 2015, p.4)

全51か国を対象とした調査では、障がい者の初等教育就学率は、障がいを抱えていない児童より10%も低い数値を記録しています。(WHO, 2011, p.206)

また、前期中等教育(中学校)レベルでの就学率の低さも大きな問題となっています。基礎教育は、初等教育(小学校)だけではありません。初等教育と前期中等教育を合わせて、基礎教育と呼ばれています。

前期中等教育の未就学児童率の推移を見てみると、2000年には25%、2007年には18%、2014年には16%となっています。(UIS, 2016,  p.2)

前期中等教育も初等教育同様に改善されつつあるものの、未だに16%もの子どもがアクセスから除外されています。

基礎教育のクオリティー

2つ目の課題は、「クオリティーの低さ」です。

90%以上の子どもたちが小学校に通うことが出来るようになるまで状況は改善されました。しかし、「通えている」だけで、「学べていない」ということが新たな問題となっています。

UNESCO Institute for Statistics (UIS)によると、6億1700万人の子供たちが読解力と数学の最低限の能力に達成できていません。(UIS, 2017, p.1)

Schooling ≠ Learning

学校で数年間在籍していたにも関わらず、数百人もの子どもたちが、読み書きや基礎的な算数ができません。(World Bank, 2018, p. 5)

この状況は「Learning Crisis」と呼ばれています。(World Bank, 2018; UNESCO, 2013; UNESCO, 2014)

このLearning Crisisにより、2030年までに中低所得国の50%以上の子どもと若者(低所得国のみの限定すると90%)が、基礎的な中等教育レベルのスキルを得ることは難しいと予測されています。(International Commission on Financing Global Education Opportunity, 2016, pp. 13-14).

また、この状況が劇的に改善されなければ、もしすべての女性が6年間学校に通うことが出来るようになっても、女性の普遍的な識字率は達成されないだろうと言われています。(Pritchett & Sandefur, 2017, p. 5).

さいごに

様々な機関や団体、国などの努力により、より多くの子どもたちが基礎教育にアクセスできるようになってきました。しかし、「アクセスは不完全」で、「アクセスできてもクオリティーが低い」という問題に直面しています。

国籍や性別、その他の要因に左右されることなく、世界中すべての子どもが、最低限度のクオリティーが保たれた教育が受けられるようになるといいですね!

参考文献

  • International Commission on Financing Global Education Opportunity, 2016. The Learning Generation: Investing in education for a changing world, s.l.: International Commission on Financing Global Education Opportunity.
  • Sæbønes, A.-M.et al., 2015. Towards a disability inclusive education: Background paper for the Oslo Summit on Education for Development, Washington, D.C.: United States Agency for International Development.
  • Pritchett, L. & Sandefur, J., 2017. Girls’ schooling and women’s literacy: Schooling targets alone won’t reach learning goals, Washington D.C.: Center for Global Development. Rattanakhamfu, S., 2016. Building and sustaining national ICT/education agencies: Lessons from Thailand (Schoolnet Thailand), Washington, D.C.: World Bank.
  • UIS, 2016. Leaving no one behind: How far on the way to universal primary and secondary education?, Paris: UNESCO Institute for Statistics.
  • UIS, 2017. Fact Sheet No.46: More Than One-Half of Children and Adolescents Are Not Learning Worldwide, Paris: UNESCO Institute for Statistics.
  • UNESCO, 2013. The Global learning crisis: why every child deserves a quality education, Paris: United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization.
  • UNESCO, 2014. EFA Global Monitoring Report 2013/4: Teaching and Learning: achieving quality for all, Paris: United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization.
  • UNHCR, 2019. STEPPING UP: Refugee Education in Crisis, Geneva: United Nations High Commissioner for Refugees
  • WHO, 2011. World Report on Disability 2011, Geneva: World Health Organization.
  • World Bank, 2018. World Development Report 2018: Learning to Realize Education’s Promise, Washington, D.C.: World Bank.

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